これ、食べなー。
看護師の夜勤バイトのときに食事介助をしていると、
ご高齢の、特に女性の方から「あんたのはあるの?」と聞いて頂く。
「食べな。」とか「半分こしよう。」とか、
ご自分の食事を差し出して下さるのね。
“大丈夫、私のもあるから”って遠慮するけど。
昔は食べ物も潤沢でもなく、
夜になったらお店もやってなかったから、
お腹すいちゃうだろうって心配してもらえるのよね。
こんなとき私はHくんのことを思い出す。
Hくんは発達の遅れがあって、
他にも事情が重なって適切な養育を受けていなかった。
他の理由で入院していたけれど、
生活習慣や情緒面を看ていくことも課題だった。
私が受け持ち看護師になって、プランを立てて。。大変だった。
でも看護師みんなで手を掛けて、みんなに可愛がってもらった。
心はみるみる成長した、驚くほどに。
そんな中、ある日デザートに須甘がでたの。
現代っ子には人気がないから、
いつもはでないけどお正月だったからだろう。
「これ、なぁに?」
デザートだよ、ご飯のあとね。
でもすぐさまひとくち食べて、彼はこう言った。
「美味しーい、これ美味しいよ。
浅原さんも食べなー。」
そう言って、自分の食べかけを差し出してくれた。
あまり満足な食事を口にしなかったHくんには、
甘くて、もちっとしていて。。
初めて食べる食感のものだったのだろう。
すごい興奮して、目をまんまるくしていた。
それなのに、私に分けてくれようとしたんだよね。
優しいねぇって、言いながら。。
私は泣いちゃいそうだった。
現代の日本って、美味しいものってわりに当たり前で。
というか、普通のものもかなり美味しいレベルで。
食べ物は溢れてて、いつでも手に入るだろう。
こども達も、大人も食べ物に執着は飢餓を経験した人のようにはない。
美味しいものがあっても、
誰かに分けることはもちろんあるんだけど。。
ご高齢の方のような時代背景や、
Hくんのような優しさは何かが違う気がする。
自分はもう手に入らないかもしれないけど、
誰かを思って分け与えようとする。。なんて表すのだろう。
透きとおっているような、無垢な気持ち。
今の時代だって、みんな優しいし。
みんな、誰か思っているんだけど。。
こころから無条件に誰かのことを思う、
自分が欲しいものが手に入らないとしても出来るかな?
そんな懸念が、私のこころの中をかすめていく。
人を大切に思うとき、
何か他の思いやり以外の材料をこころの隙間に持ってはいないかと。
多様化していく社会の中でそのことが、
“仕方ないこともある”そんな理由付けにならないといい。
人に寄り添えないときの言い訳にならないといいなと思う。
Hくんがしてくれたように、損得ない優しさを持てたらと。
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