アイス食べるっ。
看護師という仕事では、
いのちが尽きる時間に寄り添うこともあります。
でも仕事として思い悩むのは、
その瞬間のことよりも辿り着くまでの時間の方です。
グリーフケアという面からも、この時間はとても重要。
大切な人の最期までの時間としても、
ご家族からの送りだす時間としても。。
ひとつひとつがどう作用するか、
そのときに全ての見極めはできません。
動けなくなってきたとか、
食べること・飲み込むことが大変になってきたとか。
その方が望むことが出来にくくなること。
意識が遠のいてきているなとか、
その方が望むことが分かりにくくなっていくから。
遺された時間をどうしたらその人らしく過ごせるか。
その時間を支える職業の人は、
特に意識を注ぐ視点を持つことと思います。
看取りケアのときも話題がでていましたね。
大分弱りだしたNさんは嚥下が難しくなり、
肺炎でかなり厳しいところまでいきかけていました。
幸いなんとか少し復活、
今は少し呼吸も落ち着きました。
ご飯もちょっと口に出来ることがあります。
量は入らないので、
ご家族に食べやすそうなものを持ってきて頂きました。
ぼーっとしている時間も増えてきました。
意識下がってるのかなと思うときもあります。
でもね、
ひとつだけ大きい声で応えてくれる質問があります。
「痰取ろうかな?」
お返事なしです。
「痰取ったら、
アイス食べてみようかなと思ってるんだけど。」
目がキラッとします。
「アイス食べるっ。」
「食べるっ。」
Nさん、元気なときのイメージは頑固じじいなんですよ。
(失礼)
あんまり笑ってもくれないし。
一家を支えてきた厳しいお父さん像のような人。
なのに、少年のように答えてくれるから。
私はつい笑顔になっちゃいます。
「アイス美味しいよね。甘いし、元気でちゃうね。」
現実は食べるとすぐむせてしまうし、
少し味見程度のお楽しみです。
ご家族があげるのも、もう難しい。
それでも大事な大事な時間です。
Nさんにも、ご家族にも。
バニラのアイス、
この夏をいい想い出の季節にしてくれるといい。
身体と心のしんどさを和らげますように。
2016/08/12 | グリーフとの向き合い方, 繋ぐ・繋がる グリーフケア, 御家族から教えて頂いたこと, 看取り, 看護
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