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「喪失とともに生きる」書評 M様

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以前ご感想を掲載したM様の書評が届きました。
今回は敢えて、書評のみを皆様に味わって頂こうと思います。
私のコメントは後日別の記事で。

以下、M様の書評です。
掲載のご了承をありがとうございます。

 

 

「喪失」とはなんだろう。

思い出を増やすことが叶わなくなること。

思い出の中でしか会えないこと、

一方通行で思い続けるだけになること。

 

その対象が大切な人であれ、ペットであれ、物であれ、財産であれ。

いつか、自分を取り巻くすべてのひとや物事が、

一方的に思い出すだけの対象となりうることをどこかで覚悟しておく必要がある。

 

そして、いま生ある自分も「死」に向かって生きている。

「いつか、また会えるはず」と信じる自由とともに、

「いつか必ず会えなくなる日がくる」
という事実が世界中の誰にも等しく訪れる。

 

 

本書はそれぞれ異なる立場の
7名の対人援助の専門職の方々が語る7つの喪失と、
それに対する異分野の専門家のコメントによって構成されている。

 

中には乳がんを体験された看護師の方を除けば、
たとえば「遺族」など喪失の当事者でないばかりか、
当事者がかかえる痛みを和らげるべく奔走する立場の方ばかりである。

 

ところが、援助する側にとっても同じく喪失は喪失であり、
直面したケースごとに痛みを伴い、
深く記憶にとどまり、決して悲しみが色褪せるものではない。

 

失った痛みは当事者にしかわかるものではないと、
頑なこころで意地を張る必要はどこにもない。

喪失を共有してくれるひとは必ず存在するのだ。

 

 

本書には「涙がとまりませんでした」
というようなありがちな、目にとまりやすい広告もなければ、
「こうすれば悲しみが薄まります」
という具体的な処方箋が記されているわけでもない。

 

自分自身のいのちを含め、
いずれ訪れる大切なものとの別れを理解しながら生きるとき、

いま、目の前にあることに愚直に懸命に生きればよい、
という一見無欲でとてつもなくどん欲な生き方が生まれる。

 

そして、なにかを失くした悲しみを「ことば」として整理をし、
失くしたなにかと、
あるいは喪失を見守ってくれる誰かと「対話」を重ねたその先に
自分自身の中から生まれたことばが、
喪失してからのいのちを牽引する力になる。

 

看護学校など、
いずれ喪失の現場に直面するであろうひとたちの
必見の教科書に採用してほしい一冊です。

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